個人再生② ~返済額について~
個人再生によって定めた再生計画案が認可されることにより、債務額は以下のとおりに圧縮されます。
住宅ローンを除いた債務額が 100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円以下 債務額の1/5
1500万円超3000万円以下 300万円
3000万円超5000万円未満 債務額の1/10
①利用できる人は?
将来において、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、かつ、住宅ローンや税金を除いた総額が5000万円を超えない人が利用できます。
会社員や年金受給者はもちろん、自営業やアルバイト・パートの方でも月々の収入が安定していれば利用可能です。
②支払総額は?
「仮に、今すぐ自己破産をした場合、手持ちの財産を換価して債権者に配当されるであろう金額(清算価値)」より、多くの金額を返さないといけないこととされています(清算価値保証の原則)。
したがって、小規模個人再生手続での支払総額は、
A:清算価値
B:基準債権総額の一定の割合もしくは一定額(基準債権総額による最低弁済額)
C:100万円
のうち、最も高額な金額以上となります。
例えば、債務額だけで考えると、債務総額が1000万円であれば、1/5の200万円を支払えば済むことになります。しかし、株を持っており、その価値が400万円だった場合、自己破産するとこの株は処分され、400万円全額が債権者に配当される可能性が高いでしょう。したがって、清算価値保証の原則から、個人再生では400万円を分割で支払わないといけないということになります。
また、この清算価値保証の原則があるため、住宅ローンがアンダーローンになっているときは、その分だけ清算価値が跳ね上がることになります。例えば、住宅ローンの残りが1000万円で、住宅の査定価値が1400万円だった場合、「仮に、今すぐ自己破産をした場合、400万円は手元に残る」ことから、清算価値は400万円となり、この400万円を分割で支払わなければなりません。
つまり、手持ちの株の価値が400万円で、住宅ローンの残りが1000万円なのに住宅の価値が1400万円の場合、清算価値保証の原則から、合計800万円を分割で支払わないといけないことになります。結果として、個人再生でも支払いが高額すぎて、支払っていくことができないというケースも起こり得ます。この場合は自己破産も視野に入れなければなりません。加えて、個人再生を進めることを裁判所が許可(手続開始決定)するまでの遅延損害金も総債務額に付加されますので、書類収集に手間取り、開始決定まで時間がかかってしまうと、その間に付加された損害金分だけ返済額が上がってしまうことになります。
ただし、個人再生は、この清算価値の関係さえクリアできれば、数十万円程度の自動車などであれば維持できることも多いです。手元に財産を保留したければ、その分は清算価値に上積みして保留し、その分をちゃんと弁済するのであれば構わないということです。ローンが残っていたり、担保にとられている場合は別ですが、自己破産のように財産が処分されることは基本的にありません。
なお、個人再生でも、あらゆる債務が減額になるわけではなく、罰金や税金、公的年金、国民健康保険料など、国や自治体に納める債務の多くはそのまま支払う必要がありますし、養育費などの扶養義務に関する債務や、交通事故の損害賠償債務、犯罪被害者への弁償債務といった不法行為に基づく債務も減額はされません。これらは、いったん他の債務と同様に圧縮された金額を分割で払っていき、再生計画のとおりに支払い終わった後で、残りの金額を支払っていくことになります。